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K2さんの雑記


2008-05-10(Sat) [長年日記]

実務エンジニアとしての生命を終える日

仕事の夢を見た。画像の横幅を一ライン増やすのに、端に0パディングするか、実際の生データを一本増やすか。現実の私は0パディングする方式を暖めていたのだが、夢の中で別の人に、「その方法は昔やったが失敗した」と言われた。

方法を検討することはしなきゃいけないが、過去の経験で語られちゃ、成功する可能性は低いと考えざるを得ない。とすると、生データのラインを一本増やす方法を考えなくちゃいけないが、ハードウェアの制約で、これは結構難しそうに思う。今はちょうど256本の生データを採取している。これを257本にするのは、レジスタのビット数やメモリの制約などで、今のままのハードウェアでは難しいのではないだろうか。

この辺で起きた。

この思考自体は、今、現実で無意識領域に外注に出している部分で、なんどもシミュレーションが行われているところ。だから夢に見るんだろう。

で、実際に方法を考えると、あそこのCPUのコードをいじらなきゃとか、あそこのFPGAのVHDLのソースをいじらなきゃとか思うのだが、その仕事は、もう私の仕事ではない。私はマネージメントで手一杯なので、実際には部下にお願いすることになる。

そういえば、最近、私の自己研鑽は、英語やピアノやマネジメント論や本読みや有酸素運動や…… 技術的なことが何もない。あぁ、このままではコードをいじる能力がなくなるなーとぼんやり考えた。

「あ、今日が俺の実務エンジニアとしての命日として、後から思い出される日になるかもしれない」なんてふと思った。たとえばC#をやるとか、Webプログラミングに手を出すとか、自己研鑽でやりたいテーマはいろいろある。しかし、今の時間の使い方の中では、手を出す時間が全くないことに気づいた。

「あぁ、もしかしたら、もうコードをがしがし書くという経験は、これ以降の人生で一度も経験することがないのかもしれない」

そう考えると、無性にさみしくなる。今のまま研鑽を積み続ければ、少なくともまだ10年くらいは、十分一線の実務エンジニアとしてやっていける自信はある。しかし状況がその方向を示していない。どうしても軌道修正したければ、転職・起業などの方法しか残っていない。が、どうもそちらにはいけそうにない。今の状況に不満足なわけではないからだ。

となると、ここで私の実務エンジニアとしての生命は終わることになる。一番脂ののりきった時期に死を迎えるとは、なんとやくざな職業よ、エンジニアというやつは。

スーパーエンジニアへの道―技術リーダーシップの人間学(G.M. ワインバーグ/木村 泉) スーパーエンジニアへの道―技術リーダーシップの人間学(G.M. ワインバーグ/木村 泉)

スーパエンジニアへの道などを読んだときに、いつかはこんな日がくることは、肯定的に覚悟していた。いつかは実務エンジニアを卒業しなきゃならないし、もしそうなら後のキャリアを考えるなら、その日は早いにこしたことはないと思っていた。

しかし、それを、実際に悲しさとしてこんなに大きく自覚したのははじめてのことだ。

エンジニアをしているから今の状況があって、特に不満はないのだが、本当はもっと長い間エンジニアでいたかったよ。どうにもならないことなのだけど。

なぜ子育てする女性の立場が弱いのか

少子高齢化対策について、久しぶりに「これは」という話を読んだ気がする。

読みはじめは女性が書いているのかなと思ったのだが、男性のようか。

結局、今の日本の施策は、女性も働いてね、だから働かない女性に対する助成を切り捨てるよということにしか見えない。

専業で子育てをする女性は、働きながら子育てをする女性よりも多数派なのだ。声の大きさは働きながら子育てをする女性の方が圧倒的だが。

だから、子供を産もうとする女性の一人あたりの出産数が減っている。だからというのは語弊があって、実際には日本国民の生活水準が上がってきていて、この水準を落とさないためには、女性一人あたりが生む子供の数を減らさなければならないという理屈はあると思うのだが、それ以上に出産数は減っていると思う。

70平米のマンションを持つのは、東京では至難の業になりつつあるが、70平米のマンションで、3人以上の子供を持つのは、ほとんど不可能である。2人でも、子供部屋を一人一つは確保しにくい。だから女性が働きに出る必要が出てくるのだが、子育て働きながら行うのは、基本的には私には不自然に見える。

一方では、子供を持たないで、夫婦とも働いて、生活水準の高い生活がしたいという欲求が出てきても全く不思議ではない。現在はエンターテイメントが豊富だし、老後も子供に面倒見てもらえなくなっているわけだから、老後に老人ホームに入れるだけのお金を残しさえすれば、なんとかなるので、却って子供がいない方がよいのかもしれない。

となると、合理的に考えると子供がいない方がよいなんて結論が出てしまう。聡明な女性が子供を作らなくなるという状況が現れても不思議ではない。しかし国家や社会という枠組みで考えると、これは非常にまずい状況である。

じゃぁどうするか。合理的理由で子供を作った方がインセンティブがあるような社会にするか、動物的本能の子供を育てたいという非合理的衝動に訴えるかどちらかしかないのではないか。これらは二者択一ではないような気はする。両方ともに対する施策が必要な気がしている。前者に対する回答を、このリンクした記事に見る気がするのだ。

なお、子供を作るのは早いほうがよいよ、いろんな意味で。できれば20代に2人の子供を作ってしまうのがよい。それができる社会になって欲しいよな。

英文解釈教室

ゴールデンウィークに実家に帰ったときに、この本を本棚で見つけた。

英文解釈教室(伊藤 和夫) 英文解釈教室(伊藤 和夫)

伊藤先生が亡くなったときに、確かエントリを起こしたと思うのだけど、私はこの本で、受験英語をなんとかこなした。それまで英語は苦手科目でしかなかったのだけど、受験する大学の英語の内容のレベルが高いこともあって、この本を勉強して構造の難しい英文の理解する方法を会得したことで、なんとか大学受験の英語をこなすことができた。

当たり前のことなんだけど、英語→日本語→事柄という理解じゃなくて、英語→事柄→日本語という訳し方をしなさいというのがメインコンテンツで、そのための方法が延々と書かれている。高校生には正直レベルの高い内容だと思う。リンクに挙げたのは改訂版で、内容を本屋さんで確認したが、印刷の質など格段と読みやすくなっている。しかしながら、私が実家から発掘した初版本は、ハードカバーの格調高い本で、これはこれで趣がある。で、実家で前から順番に読んでみたのだけど、良質の数学の問題を解くようなおもしろさがあり、はまってしまった。

で、今実家からその本を引き上げてきて、手元にある。どうやら受験期には、この本は最後まで読解したようで、今そのレベルまで戻れるかを試してみたいと思っている。語彙の量は確実に増えているんだけどなー。英語もやるならとことんやりたいなと。思うことと現実は違うかもしれないのだけど。

「いいかい。訳せたから読めたんじゃない。読めてるから、必要な場合には訳せるんだ」

伊藤和夫 - Wikipedia」より。

伊藤先生のポリシーがよく表れているよい言葉だ。

かつては多くの受験生から支持を受けた英文解釈教室であるが、入試問題の英文自体が易化してしまった現在では、ここまで難しい構文把握を必要とする大学入試の英語の問題が影を潜めたために英文解釈教室を使う受験生がほとんど見られなくなってしまった。

英文解釈教室 - Wikipedia

より。これはこれで、さみしいものがあるな。あの英文を読みこなして大学に入学したという快感が私にはあるのだけどなぁ。

伊藤先生については、駿台予備校時代に一度だけ授業を受けたことがあるけど、本から受けるインパクトほど、実際の授業には感動しなかった。これは、佐藤文隆先生(参考)と同じ感じだな。大学時代に佐藤先生の授業も一度だけ受けたことがあって、あの佐藤先生の授業を受けているんだと感動したけど、正直授業の内容については、あまり感慨はない……

天才

天才コンプレックス - shi3zの日記

私も小学校の低学年の時に、IQが160とか170とかと言われた口だ。数値がわからなかったので、さっき実家の母親に確認した。

親父は、ご満悦だったようだが、私が勤勉でないので、それに関してはかなり不満を表していたようだ。

だからといってリンク先の御仁のように、特別扱いはされていないのは幸運だったというべきか。また、育った環境のせいかもしれないが、なぜだか小飼弾さんのように道をはずれることもなく、大人に媚びる方法をうまく身につけ、そこそこかわいがられて大人になった。

これもね、20過ぎるとただの人になるのでね、やっぱり人間努力の度合いで決まるんだよ。そう思う。そういう意味では、大学の時に、もうちょっと道の探求をしてればなーと思うこともある。

でも、そう思っても後の祭り。勉学の努力を行わなかった代わりに、手に入れたことがたくさんある。無線工学の経験だったり、心の機微を解する感性だったり、音楽的な素養だったり。だから、過去に行った選択はすべて正しかったのだと私は思うようにしている。今の自分が自分のポテンシャルとして最高の自分なんだとね。

そう思えるようになったのも、ここ数年のこと。リンク先の方も天才を認めるという価値観のパラダイムシフトを行うことで、今の自分があると主張されているが、価値観のパラダイムシフトは、アイデンティティの確立後も可能なんだよな。ここに幸せの秘密があるように思うがどうだろうか。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
(2008-05-10(Sat) 11:41)

お久しぶりです。<br>実務エンジニア…<お疲れ様でした(「お疲れ様です」かもしれませんが)。<br>K2さんの会社とは比較にならない位小さい会社ではありますが、私も似たような立場で抵抗している身としてはちょっと寂しさを感じてしまいました。<br>今のところ肩書きだけで、製造の方がメインではあるのですが、管理業務も多少はやらなければならず、年々その比率が増えてきていることに不満が募っています。<br>「まだ若いやつらには負けない」というのは、自分が年をとった証拠なのかもしれないと、最近へこんでいます。<br>この状況を受け入れられるというのは、良い意味でK2さんは大人なのでしょうね。<br>マネージメントの楽しさが見つかると違ってくるのでしょうけど。

K2 (2008-05-10(Sat) 18:49)

永さん、お久しぶりです。<br><br>我々のところでも(部員100名強)、いわゆる若手と<br>言われる30歳以下の人の比率はかなり小さく、周りを<br>見ていると50歳くらいまでは普通に現役を続ける状況<br>が現れてきています。<br><br>また、昔は、人と話をしてなんぼ(これは関西弁か?(笑))<br>という時代でしたから、コミュニケーションスキルのない人<br>は能力の低い人と見られがちでしたが、最近はインターネット<br>の普及もあり、能力の高い人がコミュニケーションスキルに<br>問題ありということも普通になってきています。<br><br>人事制度が時代に追いついておらず、そういう高年齢まで<br>高い技術スキルを会社に提供できる人を昇進させるような<br>制度になっていません。でも、これからはそうも言ってい<br>らないこともわかっていまして、制度自身も変わっていく<br>ことになります。<br><br>その中で、40過ぎで現役引退は、ある意味貧乏くじのよう<br>な気もしますが、管理業務は誰かがやっていかねばならず、<br>仕方がないと思います。なってみると、本当の意味での<br>会社人は課長からだなぁという印象が深いです。話題になっていて、<br>前にも書いた「はじめての課長の教科書」にある課長像<br>と全く同じ状況が目の前にあります。自分次第で、やれる<br>業務の可能性は非常に広く感じます。<br><br>正直、周りの人に技術スキルでは負けないと思っています<br>が、もう2年もすれば、全く別のことで自分の存在意義を<br>アピールできるようになっていなければならなくなります。<br>そんなことできるのか、不安ですね。それはそれで、<br>新たに入門ということで、ビギナーの挑戦心が必要に<br>なることで、見方を変えれば非常に新鮮でおもしろいです。


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