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K2さんの雑記


2009-12-01(Tue) [長年日記]

[英語]発音の矯正のまとめ

発音の矯正 (2009-08-04) で書いたとおり、英語の母音の発音を学習した。その後、単語の発音をすべて覚え直さなければと思い立って、DUO を開始、11月末に一巡した。現在 2set 目に入っているのだが、この辺で、少し発音の学習についてまとめておこうと思う。

英語を勉強する中で、音素(特に母音)の発話方法と聞き分けは、できるだけ最初の段階で学習しておくに超したことがない。絶対にするべき。

まず、我々の世代で英語を学んできた人は、発音に対する認識が非常にいい加減である。今の英語教育の事情をよく知らないので、現在改善されているかどうかは不明だが、少なくても我々の世代は、特に細かい母音の違いに執着して英語を勉強してはいないのではないだろうか。発音記号なんてだいたいのフィーリングで読み、大抵カタカナが併記してあるもんだから、カタカナに頼って覚える。その状態で単語をどんどん覚えていくので、何となく発音できるような気はするが、正確な発音を全く意識していない。英語らしく発音しようと思ったら、なんか口を狭くしてひねくれた音を出せばいいやなんて認識を持っていたり、そもそも英語らしい発音をすると、友達からあいつはガリ勉で変なやつだなんて認識されたりするので、逆に不正確な発音のままでいようなんてインセンティブが働いたりしていた。

こんな状態で育ってきているため、いつまでたっても正確な発音はできず、発音記号も読めやしない。しかし、覚えている単語の数だけは増えていく。発音ができなくても、読み書きには不自由しないと思っているので、長文読解問題をどんどん解いたりするし、実際できたりするのだ。

さて、最近、2000年以降くらいだろうか、シャドーイングの効果がクローズアップされ、多くの文献やサイトで、シャドーイングはいいぞとの評判が流れている。私も、勉強手法おたくで、この手の方法というのはよく目を通すので、シャドーイングの効果がどんなもんなのかについてはすごく興味を持っていて、いろいろ調べたり試したりしてみた。

「シャドーイングと音読の科学」の中で、シャドーイングは、脳の意味解析エンジンを通さずに、聴いたまま発話することで、音素のパターンマッチングの回路を育てるのが目的だという記述を読んだ(手元に本がないので、表現は多少違うと思う)。

シャドーイングと音読の科学(門田 修平) シャドーイングと音読の科学(門田 修平)

確かに、耳から入ってきた発音をそのまま発話で再現すれば、脳の中のこのプロセスに係わる部分を鍛えることができるだろう。しかし、発音の学習ができていないと、そもそも聞こえた音を、どのように口を開いて舌はどこに置いて発音するかなどがわからないので、その発音をまねることはそもそも不可能なのではないだろうか。そのため、この状態でのシャドーイングは、特にリスニングに対してはほとんど効果がないのではないかと私は考えた。

さて、以上のようなことを考えて、私は、まず母音の発音の仕方をきちっと押さえ直そうと考えた。日本人向けの Web などで発音についていろいろ調べたが、どうもサイトによって、同じ音の発音でも解説の仕方がいろいろ違っているように見えた。これだと日本人による発音解説書などは、信頼がおけないかもしれないと考え、米国発行の書籍で、発音解説の本を探すことにした。音素についてしっかり解説してあって、CD がついていて(これは必須)、値段がそこそこの本を探したところ、「Pronounce It Perfectly In English」

Pronounce It Perfectly In English(Jean Yates) Pronounce It Perfectly In English(Jean Yates)

が良さそうに見えた。Amazon の書評などを見てもベストなものは見つからなかったが、とりあえず一歩を踏み出すことが大事だと考えた。

まず母音、その後子音の順にならんでいる。まずは母音からやろうと CD を聞きながら、毎日 30分くらい、繰り返し練習した。母音については、口の開き方が狭い順に並んでいるので、母音の音素を頭の中で整理するにはよいと思う。

母音の中でも、一番最初に出てくる(つまり一番口を開かないで発音する) unstressed vowel sound の意識付けが特に重要だと思う。これは、英語で一番多く現れる音で、これを認識するだけで、多くの発音の間違えを矯正できる。また例えば work や earth などの長母音にも使われている。学習する前、これらの長母音の発声の仕方が全くわからなかったのだが、これで発音できるようになった。

全母音をマスターするのに約二か月ほどかかった。ここで注意しなければならないのは、発音記号体系には何種類かあり、日本で使われている発音記号が必ずしも海外で使われているのではないということだ。そのため、オックスフォードの英英辞典などを見ると、見たことのない発音記号が現れる。今回使ったこの本も、日本の発音記号とは違うため、実際に辞書ではどう表現されているかを調べながら、発音記号を覚えていく必要がある。

なお、私は子音については時間の関係でやっていないのだが、子音もちゃんと学習すれば、新たな発見がたくさんあるのではないかと考えている。やるべきだと思う。

母音が発音できるようになって、大変なことに気づく。今まで覚えた単語の発音の仕方が、ほとんどわからないのだ。単語の発音記号を覚えていないため、それぞれ発音できるようになっても、この単語のここの母音はどの母音かが全然わかっていないことに思い当たる。その結果、全部覚え直しになることに愕然とする。例えば、after という単語をどう発音すればよいかがわからない。こんなに簡単な単語なのに。たぶん、後ろの er は、先に述べた unstressed vowel sound であることはわかる。問題は最初の a。これは unstressed vowel sound なのか、V をひっくり返した発音記号の音か、「ae」なのか?(正解は「ae|a:」の長母音)。long は? alone は? hall は?

それまでの英語学習として、DUO3.0 は、この年の1月に一旦終えているが、覚えた単語の発音は全部いい加減である。

これは大変なことになるなと思ったが、ここまでいい加減にすませてきてしまった報いだ。一つ一つ積み上げていくしかないと考えて、DUO の総復習を行うことにした。最初から順番に簡単な単語まで発音を辞書で調べながら、一日 30分から 1時間程度復習した。これで3か月、なんとか一巡でき、基本的な頻出単語については、ほぼ辞書なしで発音できるようになった。

その間、他の音読教材もすべて正しい発音で行うことを意識した。当然シャドーイングもテキストの全発音ができるように辞書ですべて調べてから行うようにした。

これによって、今まで感じていたシャドーイングで正確に音をなぞれていなかった点も改善され、それなりに正しいと思える発音でシャドーイングできるようになっていった。

本当に当然のことなのだが、ネイティブであれば、ある単語を誰が発音しても同じ発音である。当然のことなんだが、これに気づいて感動する。そして、そういう風にその単語をその発音で聞き取れるようになっていくのが楽しい。誰が発音しても同じというのは、ネイティブにとっては当たり前のことなのだが、日本人が発音しているのを聴くと、かなり話せる人でも、必ずしもそうじゃないのだ。

ここまで来て、例えば VOA の Special English を聴くと、発音が発音のまま自分の頭に取り込まれている実感が伴うようになってすごく気持ちよい。ちゃんと聞こえていると思える。ただ、それと意味解析エンジンを動かすことはまた別のことのようで、ちゃんとコンテンツの意味が 100% わかるようになっているわけではないのだが。

ここまでの基礎ができているのとできていないのとでは、その後積み上げていく英語の学習で、全く差が付いてしまうことが十分に予想される。今まで自分はなんともったいないことをしていたのだろうと思う。

一旦取得してしまえば、後々恩恵がずっと続くという点では、キーボードのブラインドタッチに似ているように思う。どちらもマスターに2か月くらいはかかる。しかし、英語の場合、発音は基礎なので、その後の学習に対してずっと影響を及ぼし続けるところが違う。影響がより破壊的だ。

英語のリスニングで苦しんでいる人は、ぜひ発音の基礎をまずやって欲しい。マスターする時期が最初であればあるほど、その後相乗的に効いてくるはずだ。

なお、速く正確に発音できるようになるのは、リーディングの速度・正確さにも効く。なぜなら、普通の人はリーディングを行うとき、心の中で音読しているからだ。音素のパターンマッチングと意味解析エンジンはここでも使われる。だから、英語の学習において、音読がすべての基礎であるということは、間違いないと思う。


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