以下のブログでも少し紹介した、
2015年発売のTEAC製USB DAC/ステレオプリメインアンプ AI-301DA-SP/Sを2019年に購入し使用している。
USB DACとして使え、Bluetooth入力もあり、小電力ながらスピーカーを鳴らすことのできるアンプとして、非常にユニークなものだ。類似製品としてはDENONのPMAシリーズくらいしかない。USB DAC+Bluetooth入力付きでは中華製の製品は割とあるが、すぐにディスコンするしやはり品質は当て物のようなところもある。
AI-301DA-SP/Sはよくできた製品で気に入っているが、不満な点が一点ある。ボリュームの調整が難しい。ボリュームの小さいところでは変化量が大きく、大きいところでは変化量が小さく、特に小さい音量での調整が難しく、この部分に高級感を感じることができない。
人間の感覚は対数の特性を持っている。聴覚も同じである。例えば騒音の単位は[dBA](デービーエーと読む)だが、これは10の対数の10倍をある基準を持って数値化したものだ。エネルギーが2倍になると3dB変化する。人間の感覚はdBで表した方が納得感がある。つまり、エネルギー量がある単位で50から100になったとしても、2500から5000になったとしてもdBでは同じ3dBの変化量であり、聴覚としては、両者はちょうど同じ割合で音量が大きくなったように聞こえる。つまり線形システムでは、小さい場合の変化は大きく感じ、大きい場合の変化は小さく感じるのが人間の感覚である。
聴覚はこのような特性を持っているので、可変抵抗器には、抵抗値変化カーブが特殊なものが存在する。通常用途用の製品は線形変化するが、アナログアンプのボリュームに使われるものは、小さいところの変化を小さく、大きいところの変化を大きくするように設計されている。
例えば以下のサイトを参照。中程のグラフで、Aタイプがボリュームに使われる可変抵抗器のカーブだ。
さて、このAI-301DA-SP/Sのボリュームをいじっていると、どうもこのアナログアンプの可変抵抗器に線形変化を持つものが使われているのではないかという感覚を持つ。
ちょっと興味が出たので、インターネットを調べてみた。
ボリュームに違和感を感じているというレビューはいくつかあるが、原因に言及したものは見つけられなかった。
その後調査をしていくなかで、サービスマニュアルがダウンロードできるサイトを見つけ、回路図を手に入れることができた。ボリュームの部分の回路図は以下だ。
電子ボリュームが使われているという噂もあったのだが、回路図上は二連可変抵抗器である。型番はRD16312_100K_1B。この部品の情報を検索するのがなかなか難しかったが、これも見つけることができた。FORWARD ELECTRONICSという台湾メーカーのようだ。
型番から判明することは、16mmのSuperというProductで、シャフトは1本、2連であることがわかる。100Kは最大抵抗値が100kΩという意味だが、その後ろの「1B」が、たぶんだがDesign CodeとDetail Specificationに当たりそうだ。Design Codeのバリエーションにはトーンとボリューム、モーター仕様のものがあるようだ。モーター仕様はよくわからないが、トーンとボリュームは上記で説明した変化パターンを指すと推測する。ここが1なのでトーンが使われている!
これがABでボリュームタイプであれば、ボリューム変化の違和感は軽減されるのではないだろうか。
なお、このメーカーの可変抵抗器を個人で手に入れることは検索した範囲では不可能のようだ。もし手に入れば交換という手も考えないのではないのだが……
もし推定が当たっていれば、オーディオ製品としては非常に初歩的な部品選定ミスだと思うのだが、TEACはいぶし銀の製品を作るメーカーだと思うので、そんなミスを犯すとも考えにくい。トーンを選択する他の理由があるのかもしれない。
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