[本]新型コロナウイルス-脅威を制する正しい知識

感想

新型コロナウイルス:脅威を制する正しい知識 水谷哲也

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2020/5の新刊、実際に書かれたのは2020/3末くらいまでだと思われる。Kindle本はなし。

コロナウイルスとその流行を科学的知ることが目的で、90分の講義形式で書いたとのことだが、さすがに90分では読めない。急いで書かれたのか、解説が十分でなく難解な部分があり、特にウイルス学のあたりは丁寧な議論ではないので、読み通すのが難しい。どうせ詳細はこの本で知ることはできないのだからと斜め読みすれば90分で読めるが、それだと「科学的に知った」ことにはならないと思うので、中途半端感がただよう。一見文体は初学者向けのように見えるが、書いてある内容は高度で、また初学者が知らないことが前置きなしでばんばん出てくるので、文体にだまされてはいけない。

コロナウイルスのやさしいウイルス学の章は、少し端折りすぎと思われ少々消化不足。科学入門書を読むように読もうとすると、この本だけでは理解ができない部分がある(科学の専門書では往々してあることだが)ので、理解しようと苦労してもそもそも無理がある。もう少し丁寧に書いてもらいたかった(もしくは専門書の顔をしてほしい)。

感染者数に関する記述は興味深い。インフルエンザは毎年推定1000万人がかかると厚労省から発表されているが、感染者数の算出方法は推定である。その推定方法は、全国5000カ所に定点医療機関があり、そこで報告された感染率に対して、全国の外来患者総数をかけて推定値を算出する。インフルエンザでも推定であり、そもそも真の感染者数を計測することはできない。新型コロナ感染症に関しては、WHO発表で重傷患者の割合は約20%と言われている。ここから現在日本で感染者とされている人数を重傷者と考えれば、その5倍すればだいたいの総感染者数が割り出せるとある。3/25で発表されている感染者は1307人、その時点での総感染者数は6535人と推定される。ただし、4月頃までならこの推定は成り立つと思われるが、8月現在、感染者がすべて重傷者という仮定は成り立たないだろうと思う。

また、今回は中国での初期対応の問題が指摘されているが、仮に日本で新しい呼吸器ウイルス感染症が発生したとしても、日本での診断の現状から考えると、初期段階でのコントロールは難しいと考えられるそうだ。病院ではインフルエンザウイルス以外の検査は行わないので、患者は確定診断なしで家に帰され、そのまま他の人に感染させてしまう。結局新しいウイルスが発見されるのは、かなり感染した状態になってからとなる。

PCR検査の原理、ワクチン開発、治療薬にについては一通り解説されているが、一般の人が知っておかなければいけない、知っていた方がよいことへの重点の置き方がちょっとおかしいような気がする。例えばPCR検査の原理やワクチンの古典的な開発法、新しい開発法はわかりやすかったが、ワクチン開発に必要な設備についての詳細な知識は必要なのだろうか。感染対策されている特殊な設備であることがわかればよいのではないか。治療薬についても現在候補に挙がっている薬を順に挙げているのみで、それらついての展望や著者の考え方は説明されておらず、判断は読者に丸投げである。

マスクについても言及がある。不織布の家庭用マスクは2003年に登場、飛躍的にマスクの性能が向上。細菌飛沫・ウイルス飛沫・ラテックス粒子を99%カットできる。よってマスクは有効と結論づけているが、今の世論の流れから行くとちょっとあっさりしすぎか。

情報源について、学会発表は審査がないので、それだけでは信用できない。査読された学術論文は審査のプロセスがあるため、比較的信頼できる。なのだが、査読されていない学術論文がネットで公開されていることもコラムに例があげてあり、査読されている論文かどうかの区別方法は書かれていない。

なお、医療以外の社会的なこと、経済的なことにも言及があるが、ご本人の専門ではないので、この辺は流し読みでよい。

現在入手しにくいほど売れているようだが、無理して読まなくてもよいと思う。この本が読み通せるほど科学リテラシーがある人なら、この本から新たに入手できる情報はあまりないし、科学リテラシーがなければ、この本を読み通すことは難しいと思います。

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